青少年読書感想文全国コンクール

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課題図書

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各課題図書の選定理由は、第69回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」選定委員会の報告をもとにしています。
※『学校図書館』(全国学校図書館協議会)2023年5月号掲載

※レビュー提供元:NetGalley

小学校低学年の部

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それで、いい!

きつねは絵をかくのが大好き。森の仲間は「へんな絵」とからかいます。でも、うさぎが「きつねの絵、大好き」といってくれて……。

 


【みどころ】
絵をかくのが大好きなきつね。「へんな絵」などという友だちの言葉に、絵がかけなくなってしまいます。そんなとき、親友のうさぎに会い、絵が大好きな気持ちを思い出します。ありのままの自分のすてきさに気づくお話。

礒みゆき 作
はたこうしろう 絵
ポプラ社
1,430円

【選定理由】
自己肯定感が小学校低学年なりに伝わってくる、自分のよさや自分の好きなものを考えられるような内容で、心がやさしく温かくなる。特に1年生に読んでほしいかわいい作品。
図書館関係者

それで、いい!
潔いタイトルがいい!大好きだ!
そうなの、君たちは、それで、いい!
きつねさんは、その思いに行きつくまでに、色々悩んで、考えて。。。
でも、そのおかげで、うさぎさんという素晴らしいお友達ができたね。
周囲のことばや目に惑わされて、自分の大好きを見失ってしまっている子供たちに大きな声で言ってあげたい。
自分の大好きを大切にすればいいんだよ。
そう、それで、いい!

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レビュアー

いくつもの伏線をはる大人の小説と違ってストレートに感情に訴えてくる児童文学、とりわけ絵本の世界は大人にとっても心を癒してくれるすばらしいものだと思う。この作品もその一つである。
自分の好きなもの、得意なものが認められて、ある日「何者」かになれるかもしれない期待が訪れる。でもその重圧に押しつぶされそうなとき、もう一度原点に戻ろうよと呼び掛けてくれる。その温かさの源にある友だちの何気ない言葉。焦らなくてもいい、あなたの感じるままに進みなさいと背中を押されたその先に自分の道があることを伝えてくれるお話。急かされて息苦しい社会の中で、ふっと立ち止まる瞬間が子どもにも大人にも必要ですよね。

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レビュアー

とても素敵なお話でした。
読み終わった時に、タイトル通り、「それで、いい!」と自分のやること、好きなことに、自信を持てるようになる子が、いっぱいいるだろうなと思いました。
絵本ではないけれど、挿絵がたくさんあって、本が苦手な子でも読みやすいのではないかと思います。
またその絵が、作家さんが絵も描いたのかと思うくらい、本文とよく合っていました。
わしの絵も力強くていいですし、うさぎさんの絵も愛に満ち溢れてる感じでしたし、最後の夕焼けの色も素敵でした。
お気に入りの本だけを集めた本棚に入れておきたい一冊だと思いました。

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よるのあいだに…:みんなをささえる はたらく人たち

私たちがねている夜の間も、町ではたくさんの人が働いている。どんな人たちが、みんなのくらしを支えてくれているんだろう?

 


【みどころ】
私たちが寝ている夜も、町には明かりがいっぱい。大きなビル、夜の道、線路の上……たくさんの人が働いている。ふだん直接目にすることの少ない、夜間に働く人たちの仕事を通して、社会や人々のつながりを描いた絵本。

ポリー・フェイバー 文
ハリエット・ホブデイ 絵
中井はるの 訳
BL出版
1,760円

【選定理由】
人々が眠る夜間に働いている人々とその仕事が物語として描かれており、子どもの視野の広がりが得られる。翻訳絵本としての絵と文の表現が高く評価でき、紙の本のよさを再認識できる装丁。
教育関係者

絵が素敵。はっきりした色使いがかえって幻想的なムードを高めている。街の様子がよく書き込まれていて楽しい。夜中に仕事をしている人たちの様子が学べ、いろいろな人がいて自分の生活が成り立っているのが感慨深い。

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図書館関係者

シンプルなタイトルのとおり、よるのあいだに活動している人たちのすがたが直球でとびこんでくる。静かに、確かに生きている人たちが、おちついているけど明るい色彩の絵で、心に残る。まず読み聞かせで、子どもたちに紹介し、また何度も自分で読んでもらえる絵本です。

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書店関係者

朝、お店にきちんと商品が並んでいてすぐに買い物ができるのも、電車が時間通りに安全に走っているのも、夜ほとんどの人が眠りについている間に働いてくれている人たちのおかげ。私たちの生活を支えてくれている人たちの事をやさしいタッチの絵で分かりやすく描いていて、色々な仕事について理解を深められ、リスペクトできるようになる絵本。できれば子どもたちと一緒に話し合いながら読みたい一冊。
読ませていただき、ありがとうございました。

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けんかのたね

ある日、家の中は大さわぎ。いぬはねこをおいまわし、4人きょうだいは大げんか。いったい何があったの? なかなおりできるの?!

 


【みどころ】
お父さんやお母さんがけんかのわけをきいても、子どもたちは口ぐちに、自分のせいじゃない!というばかり。じゃあ、だれのせい? 大きなもめごとも、はじまりは小さなできごと。日常のひとコマをゆかいに描きます。

ラッセル・ホーバン 作
小宮由 訳
大野八生 絵
岩波書店
1,430円

【選定理由】
昔話のような、わかりやすく、オチのあるストーリーの中に、少し長めの文章をしっかり読ませるという文章の力を感じる作品。読んで楽しむのはもちろん、読書感想文を読みたくなる物語。
教育関係者

うちでも3人の子供達がやっているような話で、小学生2人と楽しく読ませていただきました。
ネズミの台詞がなかなか潔かったです。最後もほのぼのしました。うちもけんかしてみんなイライラしていましたが、本を読んで気持ち良く寝れました。寝る前にも良いです。

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図書館関係者

誰かがおへそを曲げていたら、その悪い空気はびっくりするほど早く伝染するんですね。そして、その反対に、誰かが優しい気持ちになったら、その優しい暖かい気持ちも周りにどんどん広がっていく。そんなことを教えてくれた本でした。
最後のねずみさんのオチには笑わせてもらいました。イラストのねずみさんのお家には、ボールペンのキャップ、ボタンや糸巻きが使われていて(探すとまだまだたくさんありますよ!)、こんな細かいところも楽しませてくれる本です。

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図書館関係者

『おやすみなさいフランシス』のラッセル・ホーバンの作品なので、安心して手にとりました。全てのページに挿絵が入っていて、絵本から児童書へ移行する時期の橋渡しによさそうです。昔話によく見られる累積譚が絵物語になっているのですが、想像する力が弱い子でも、挿絵を楽しみながらだと、グルグル巡るお話についていけると思いました。挿絵もセンスが良くて好きです。お話の最後の落ちが効いていて、更にグルグルつながっていく感じが楽しく、読後感がとてもよいです。

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うまれてくるよ海のなか

魚の卵、見たことある?親たちが、口やおなかの中でひっしに守り育て、生まれてきた子供たち。「がんばれ~!」と応援してね。

 


【みどころ】
魚の卵、見たことあるかな? 口の中で卵を守る、魚たち。お腹の中で子育てする、タツノオトシゴ。お父さんお母さんが、口やお腹の中でひっしに守り育て、生まれてきた海の子供たち。「がんばれ〜!」と応援してね。

高久至 しゃしん
かんちくたかこ ぶん
アリス館
1,540円

【選定理由】
海の中の生き物が、それぞれいろいろな場所で産卵し、それぞれの方法で育てていることがわかる。低学年向きの自然科学の本として、写真がよく、命の大切さや命を守る工夫が伝わってくる。
図書館関係者

なんて鮮やかできれいな写真なんでしょう。 どうしたら、こんなに美しく、しかもこんなに近くで、お魚たちとお話ができそうな距離から写真を撮ることができるのでしょう。
お魚のお父さんやお母さんも、一生懸命に、色々な方法で子供たちを守っているんですね。
最後の、巣立つときであろうオオウミウマのあかちゃんの写真が、とても印象的です。

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図書館関係者

写真が色鮮やかで、とても素敵です。海の生き物の卵が孵るまで、どんな風に過ごすのか分かりやすい言葉で書かれています。卵を狙うヒトデをやっつけたり、見つからないように隠していたり、口にくわえたりと、いろいろな方法で卵が守られていることを知ることができます。子供達が読めば、家族の中で小さな存在である自分のこととして感じることもできるかもしれません。
最後には卵から孵った小さな赤ちゃん達の写真もあり、その先も知りたくなりました。

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レビュアー

高久至さんの写真がなんとも言えず美しい。
海の魚たちの産卵と卵の保護、世話、孵化などのようすをリアルな写真で紹介する。
いろいろな海の生き物たちの、不思議とも思える色や形の卵。産み方、守り方、それぞれが個性的でおもしろい。
タコのお母さんの産卵では、その切実なようすに感動を覚えます。
海の生き物たちのまさに命がけの産卵と孵化までの世話は、そこになんらかの感情があると感じてしまいます。
魚たちは母魚より父魚は卵を守ることが多い理由を高久さんが巻末で語ってくれています。納得!ものすごい数の卵を産むのに、無事成長して、成魚になることができるのは、ほんのわずか。
命のサイクル、自然界の捕食関係の厳しさを思いますが、みんなバランスの上のことだと感じます。

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小学校中学年の部

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ライスボールとみそ蔵と

ジュンは、古くさいみそ屋が大きらい。でも帰国子女のユキちゃんとの出会いをきっかけに、ジュンのみそ蔵改造計画が動き出す!

 


【みどころ】
ジュンは、みそっ子とからかわれるので、古くさいみそ屋が大きらい。でも、帰国子女のユキちゃんとの出会いをきっかけに、ジュンの心が大きく変わっていく。そして、仲間とのふれあいから、みそ蔵改造計画が動き出す!

横田明子 作
塚越文雄 絵
絵本塾出版
1,540円

【選定理由】
主人公が自らの「足もと」に目を向けていく心の変化の過程が、読みやすい文章で書かれている。また、味噌の歴史や作り方を通して、日本の食文化について理解を深められる。
レビュアー

味噌蔵の息子に生まれたジュンは家業を冷やかされたりするし、全く興味を持てずにいたのに、帰国子女のクラスメイトのユキが味噌蔵を見たいと言い、蔵に招いたことから気持ちの変化が始まる。
何事も知ることから始まるのだ。毛嫌いしていた味噌作りの仕事の重要性や、何よりそのおいしさを再認識していく中で、積極的に味噌をアピールすることを考えるジュン。
味噌を使った料理、味噌蔵の匂い、日本の文化の一端をこの本で知ることから広がっていくものはあると思います。

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書店関係者

好きで味噌蔵の子に生まれたわけじゃない!
ジュンの言葉はいろんな人に刺さります。 自分の家の家業なのに、知らないことがたくさんあることに気付き、
魅力に気付き、
みそっこという囃し言葉が自分のアイデンティティになる。
凄く良い子ばかりでビックリするけど、良い話でした。

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図書館関係者

推薦図書なので読みました。
「他者からの視点がきっかけで、家族や自分を見直す」という、小学生が経験しそう、経験してほしい物語でしたので、なるほどと思いました。
また、和食、伝統的な文化、発酵食品、外国語など、発展させられるテーマがいろいろと考えられそうなので、学校図書館的には助かる本です。

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秘密の大作戦!フードバンクどろぼうをつかまえろ!

満足に食事ができない家庭に食品を分けてきたフードバンク。ここの食品が急にへってきた。少年たちがその原因をさぐっていく!

 


【みどころ】
満足な食事ができない家庭に「食べ物」を分けてきた「フードバンク」。ここの食べ物が急になくなってきた。少年たちが考えた大作戦で、その原因をあばいていくスリルあふれる物語。

オンジャリQ・ラウフ 著
千葉茂樹 訳
スギヤマカナヨ 絵
あすなろ書房
1,540円

【選定理由】
貧困のもと、困難な状況の主人公と家族が互いを思いやる様子が、温かく描かれている。泥棒を捕える場面の躍動感や挿絵に親しみが持て、物語を楽しむうちに貧困を考えるヒントが得られる。
図書館関係者

冒頭から、貧困家庭の現実が突きつけられノンフィクションの話を読んでいるようでした。
社会が抱える多様な問題がストーリーの中に入っていて、読みながらいかに自分が無力な大人かを突きつけられているようでした。これはとても重要な事です。なぜかというと、そうする事で、より自分ごととして考えるようになると思うからです。子を想う母の気持ち、家族を想う子の気持ち、友だち同士の思いやり、勇気。ギュッと入っていました。
日本でも、フードバンクや子ども食堂の活動をされている方が多くいらっしゃいますが、そういったニュースや地域の情報誌などに掲載されている記事を見ても、その活動の重要性や社会の現状、事の重大さを分かっていない、気づいていない、気づいていても行動していない何かの流行りかとさえ思っている大人はいると思っています。私もつい数年前までよく分かっていませんでした。
今回、小学校中学年の課題図書となりましたが大人の方々にも広く読んでいただきたいですし、読んで自分自身に問い掛けたい一冊です。自分は今まで何をしていたのか。フードバンクについてどういう認識を持っているのか、または持っていたのか。こういった社会になっている原因の1人になっているのではないか。社会が抱える問題の一部が分かりやすく描かれている作品だと感じました。心に刺さりました。ありがとうございました。

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図書館関係者

日本にはあまり馴染みのないフードバンク、というシステムについて知ることができるお話しでした。
これを読んで、まわりのお友達や、貧困問題について想像ができるひとが増えていってくれたらいいなと思いました。
最後がスカッと爽快なので、子供達も楽しく読んでくれそう。
SDGsの読み物としてオススメしていきたい。

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図書館関係者

課題図書として適した本だと思いました。フードバンクという食品ロスを主軸に、母子家庭の難しさ、貧困などに焦点を当てられているものの、重苦しい雰囲気はない。事の深刻さは子どもたちを通して伝わってきますが、物語はハラハラドキドキワクワクと終始楽しく読めます。

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化石のよぶ声がきこえる:天才恐竜ハンターウェンディ・スロボーダ

探検好きの少女が、ある日恐竜の化石を見つけて……!? 角竜類の進化のなぞを解き明かした、女性恐竜ハンターの伝記絵本。

 


【みどころ】
白亜紀を生きた恐竜「ウェンディケラトプス」の化石を世界ではじめて発掘し、その名の由来となったカナダの女性恐竜ハンター、ウェンディ・スロボーダ。現在も活躍する彼女の半生を描いた伝記絵本です。

ヘレイン・ベッカー 作
サンドラ・デュメイ 絵
木村由莉 訳・監修
くもん出版
1,760円

【選定理由】
3年生向けのノンフィクションが少ない中、現役科学者の子ども時代から業績をあげるまでを生き生きと描き、大人になることへの夢や憧れを持てる点、男女問わず興味を引く内容となっている。
図書館関係者

自分の”好き!”を見つけることって、こんなに素敵なことなんだ!
大人の私も読んでいるだけで、ワクワクしてきます。
子供たちが読んだら、もっとドキドキすることでしょう。
ウェンディさんのことが書かれた本でありながら、恐竜や化石のことを知り、自分たちの未来が楽しみになる、そんなたくさんのワクワクが詰まった一冊です。

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図書館関係者

好きって最強!
好きを追求した先に、成し遂げることができた人の存在は、今を生きる子たちに力を与えてくれる。巻末の対談が、また秀逸。誰にも好きを止められる謂れはないこと、すぐに仕事に結びつかなくてもいいこと、別の道の存在を知ることの意味など、きっと胸にささる子がいると思う。
課題図書として選ばれたことで、より多くの子の手に渡り、心に言葉や光が届くといい。

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教育関係者

好きな事を仕事にできる幸せ。観察力やコミュニケーション力は「好き」な気持ちが芯にあるからこそ最大限に発揮する。溢れ出す「好き」エネルギーが疑問や探究を積み重ね、現代や人の役にたつって素敵!なにより後書きに古生物学者の対談があり「好きな事を好きと言えない」「好きな事がわからない」と言う人にも向けてもヒントを残してくれているのが良い。イラストからストーリーには直接関係ない人種や障碍、宗教の違いも関係なく「好きへの扉」が開放されているメッセージが届く。

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給食室のいちにち

給食はどうやってつくるの?  栄養士って何をするの? 給食が教室に届けられるまでの給食室のいちにちをのぞいてみよう!

 


【みどころ】
給食室には、いろいろなひみつがあります。 調理員のエプロンや靴の色が違うのはどうして? 給食を最初に食べるのはだれ? 給食室のひみつをさぐりながら、給食がつくられるようすをのぞいてみましょう!

大塚菜生 文
イシヤマアズサ 絵
少年写真新聞社
1,870円

【選定理由】
衛生面から児童が入れない給食室で、身近な給食がどのように作られているか、子どもが理解できるよう、その過程をわかりやすく表現している。また、食育や勤労の視点も取り入れている。
図書館関係者

給食を作るだけでなく、どんなことに気をつけているかやその対策、道具や配置、作り方、食べた後の片付けまで、身近な存在なのに普段なかなか知ることのできない場所である給食室の様子が1日の流れに沿って丁寧に描かれています。カレーを作る工程は絵と文章の効果で匂いがしてくるようでした。調理員さんが年代や性別が多様なこと、栄養士さんについても説明があるのもよかったです。栄養士さんがクイズで食育をしたり、健康に暮らせるように栄養を考えたりアレルギーに配慮した献立作りをされているなど、知らない一面を知ることができました。給食を食べている場面は本当に美味しそうで、私も一緒に食べたい!と思ってしまいました。

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教育関係者

給食室を受け取る、食器を返却する時にはいる。調理室はちょこっと覗けるけど、その奥がどうなっているかは考えた事もなかった。そして、調理の段階によってエプロンや手袋の色をかえたり、トラブルが起きないように細心の注意が払われている。ありがたい事だな、と思う。

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レビュアー

給食の絵やお話が好きなので気になり読ませていただきました。
よくある簡単な学校の給食について描かれたものかなと思ったら、職業として始業から終業までに行われる作業や工程について細かく且つ解りやすく説明されており、大人でも「知らなかった!」という発見がたくさんありました。
給食ができあがるまでだけじゃなく、食べ終わった後(仕事が終わるまで)も描かれていたのが良かったです。
日々、給食を食べる子どもたちにとって給食がどのように作られ、届けられるのか解って良いなと思いました。
山川さんが献立を考えるページでは、美味しそうな給食の絵がたくさん並んでいてとてもお腹が空きました!好きなページです。
楽しい給食の空気や、毎日給食が楽しみだった子供の頃を思い出しました。

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小学校高学年の部

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ふたりのえびす

笑いと福をまねく「えびす舞」を演じることになった太一と優希。「自分」を見つめなおしたふたりが、最後につかんだものは……?

 


【みどころ】
クラスでは明るいおちゃらけキャラを演じている太一。王子と呼ばれ女子に人気の高い大路優希と「八戸えんぶり」でえびす舞を踊ることになった。たがいの気持ちをぶつけ合いながら、最後にふたりがつかんだものとは?

髙森美由紀 作
フレーベル館
1,540円

【選定理由】
キャラを演じて自分を隠し、本来の姿を理解してほしいと苦悩する主人公の姿に読者が重ね合わせて考えることができる。あわせて読者に自身と周りの人々への気づきや共感をわき起こさせる。
書店関係者

太一くんに親近感が湧きすぎて応援しながら一気に読んでしまいました。
お父さんのアドバイスにハッとさせられます。自分の感情を「ムカつく」で片付けず、しっかりと捉えることー。心のモヤモヤを訳もわからぬまま放置して溜めていくのではなく、自覚して向き合うことの大切さを思い知りました。
簡単に上手くいく方に逃げるのではなく、本当はどうすべきだったか、どうしたら作られた自分を打ち破れるのか、伝統芸能「えんぶり」のえびす舞に挑む中で、多くのことを感じて考えてある結論に達する太一くん。伝統芸能に奮闘する成長物語っていうだけじゃなく、内面の大きな飛躍を目の当たりにできる、清々しい作品でした。

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図書館関係者

郷土芸能「えびす舞」をテーマにした作品。中心はキャラ作りをしている太一とキャラを捨てたいと思っている大路。
キャラ作りを全否定するのではなく、キャラを作ることで、そのキャラになっていくというのはあると思います。でも、キャラ作りがしんどいのであれば、それはする必要がない。
学校で「キャラ」がしんどいと思っている子どもたちに読んでほしい本です。

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レビュアー

軽快なノリで進んでいくので、サクサク読めます。訛りもいいアクセントになっていて、好感をもちました。
子供たちの様子がイキイキとえがかれていて、共感を持って楽しんで子供が読めると思います。成長の中で誰もが抱く不安や悩みをあまり暗くならずに、読ませてくれるところがありがたい。今の子たちに読ませたい明るさがあると思いました。

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5番レーン

小学校水泳部エース・ナルの、大会に向けた熱き日々。勝てない苦しさやライバルへの対抗心、初恋にゆれる韓国発青春ストーリー。

 


【みどころ】
小学校水泳部エース、カン・ナルの、大会に向けた熱き日々。勝つことが全てだと思っていたナルは、急にタイムを上げてきた他校生に負けてしまい苦しむ。ライバルへの対抗心や焦り、初恋にゆれる韓国発青春ストーリー。

ウン・ソホル 作
ノ・インギョン 絵
すんみ 訳
鈴木出版
1,760円

【選定理由】
韓国を舞台に、学校の水泳部で悩みを持ちながら成長する主人公と読書を通して知り合うことは、読者にとって大きな成長につながる。等身大の子どもとの出会い・触れ合いが期待できる。
メディア/ジャーナリスト

とてもいいお話だった。水泳競技部に属する小学校6年生の話なのだが、勝ち負けが数字で決められる試合(勝負)の世界で、自分の体と心の弱さを認め、それを乗り越え、前に向かって進んでいくことは容易なことではない。主人公の漢江小水泳部のエース、カン・ナルは突然現れた別の小学校に通うキム・チョヒに試合で一位の座を奪われてしまう。でも、自分の弱さをチョヒの「キラキラ」光る水着のせいにし、転校生のテヤンの腕の長さと比べて、自分の腕の短さのせいにする。幼馴染で6才のときからずっと一緒に水泳をやってきた仲良しの男友達スンナムにもきつく当たってしまう。ナルの憧れで体育中学校に進学した姉のボドゥルが突然、競泳をやめて高飛込に変更したのも、ナルにはその理由が理解できない。そして、なぜ、水泳を続けているのか、自分の深い部分と向き合うことができないナルはついに、ある行動を起こしてしまい、そのことがさらに自分を追い詰めることになってしまった。
この物語は、水泳競技という水の中の世界で多感期の子どもたちが自分の弱さにいかに向き合い、居場所を見つけ、前進していくか、が友情や恋の話も散りばめながら、繊細に、そして力強く描かれている。作中の優しいタッチのイラストも物語に温かさを与え、巻末の第21回トンネ児童文学賞大賞を受賞したこの作品の選評、訳者すんみさんの「あとがき」も読み応えがある。

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レビュアー

主人公は負けず嫌いな水泳少女。スランプで荒れ気味だった彼女が、注目を集める転校生との触れ合いのなかで、初めての気持ちに目覚めていきます。
こんなに揺さぶられたのは久しぶりですね。
友情、恋愛、家族愛。すべてが優しく、温かくて、心の琴線に触れるわ触れるわ。
そして、終盤には物語が沸騰。
圧巻でした。
序盤の主人公が迷走し続ける部分では、ナニコレ?と感じていたのですが、読むのをやめなくてよかったです。もし合わないと思っても、校内大会の章までは絶対に見て欲しい。
あとは、きっと止まれない。(対象年齢は11歳以上かな?)

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図書館関係者

青春眩しすぎて、羨ましすぎて、ちょっと泣けた。
水泳部エースの女の子が、水泳が好きな自分の気持ちと戦う話。もちろん他校のライバルも出てくるけど、この話はやっぱり自分との戦い、メンタルの話だと思う。そして恋と友情。
この話を子どもたちがどう受け止めるのか、いまから反応がとっても楽しみ!積極的におすすめしたいです。

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魔女だったかもしれないわたし

昔、「人とちがう」というだけで処刑された人たちがいた――。「魔女狩り」という史実に絡めて、自閉の少女の成長を描いた感動作。

 


【みどころ】
昔、「人とちがう」というだけで処刑された人たちがいた――。魔女裁判の話を聞いたアディは、慰霊碑を作ることを提案するが……。「魔女狩り」の史実に絡めて多様性の大切さを訴えた、自閉の少女の成長を描いた感動作。

エル・マクニコル 著
田理絵 訳
PHP研究所
1,540円

【選定理由】
多様性と共生について深く考えることができる。自閉的な人たちの特性や悩みが主人公らの体験として描かれ、理解につなげることができる。また、こうした子どもたちとの接し方の導きにもなる。
図書館関係者

表紙の絵と題名から甘めのファンタジー小説かなぁとあまり期待せずに手にとったが、今年読んだ本の中で一番面白かった。ドナ・ウイリアムズの『自閉症だった私へ』を読んだ時の驚きが蘇ってきた。発達障害に関わる全ての大人は一読すべき。作者自身も自閉スペクトラム症とのことで、感覚過敏の状態が丁寧に描かれていて辛さが理解しやすい。教科書的ではなく、共感的に理解できるのが、物語の素晴らしさだと実感できた。障がいだけでなく子どもの成長や社会との関わり方を描いた作品としても秀逸。

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レビュアー

スコットランドの小さな村に住む、自閉的11歳の少女アディが主人公。
魔女狩りの話も自然に盛り込め、古い感覚のまま生活している人たちが多く住んでいそうな、「スコットランドの片田舎」という舞台設定がとてもよかった。
自閉の特徴を持つ自分と、魔女狩りで犠牲になった女性たちとを重ねて、彼女たちのために慰霊碑を建てようとアディが行動を起こすことで物語は進んでいく。
わりと登場人物が多いのだが、無駄な人物が一人としていなかった。
アディの自閉的特徴を、理解する人、理解しない人、理解できない人、知ろうとしない人、聞こうともしない人など、人物描写がうまい。
物語として十二分に楽しめるが、それ以上に、アディの目を通して、自閉的な人たちが、どのように感じ、どのように考え、どのような生活を送っているのかが、とてもわかりやすく描写されていて、自閉というものを知るきっかけになる物語だと思う。
タイトルの「魔女だったかもしれないわたし」というのは、時代が違えば、自分も理解不能の恐ろしい魔女として、処刑されていたかもしれない、という気持ちから。
英語のタイトルは「A Kind of Spark」で、どこにも「魔女」とは書かれていないのだが、日本語版のこのタイトルは、英語のタイトルよりもいいんじゃないかと思った。
タイトルに限らず、翻訳されていることを忘れるくらい、とても自然な文章で、素晴らしい翻訳だった。
小学校高学年の課題図書だが、年齢に関係なく、多くの人に読んでもらいたい物語だ。

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図書館関係者

読み進めていくと、主人公と同じように感じていた事もあったなと、共感しながら読ませていただきました。時代背景としては、私が生まれるよりも前のようですが、自分の小学生の時に自閉だとか言う言葉はなく変わっているとか、もっと差別的用語を使ってくる同級生もいましたが、誰も知らない事は言いようがないので、割と自分は普通に過ごしてきたのだと感じました。本に出てくる嫌な先生のような先生も、昔の担任を思い出すようでした。読んでいて、同じように抉られました。作品を否定されるだけでも、魂が壊れるようなのに、それを壊された主人公の気持ちはとてもわかりました。最後の結論に辿り着くまでの経過は全て必要な事だったのだろうと、自分にも置き換えて拝読させていただきました。そして、環境はとても重要なのだと感じました。

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中村哲物語:大地をうるおし平和につくした医師

「治療どころではない。まず水が必要だ」渇きに苦しむ人々を救うため、途方もない事業をなしとげた医師。波乱にみちた生涯をつづる伝記。

 


【みどころ】
病気や飢えに苦しむアフガニスタンの人たちを目の当たりにした中村医師は、白衣を脱ぎ、驚きの行動に出ます。それは砂漠となった土地に用水路をつくり緑の大地を蘇らせること……。波乱にみちた生涯をつづる伝記。

松島恵利子 著
汐文社
1,760円

【選定理由】
中村哲氏の一生や生きざまを丁寧に描き、小学生でも十分に理解でき、共感できる。また、「寄り添う」姿勢や、「人を育てる」姿勢が読み取れ、用水路建設が成し遂げられた理由が理解できる。
図書館関係者

中村さんの人生に触れていると、好奇心や考えて行動することの大切さを実感します。読めば読むほど「なぜこんな人が亡くならなければならなかったのか」と思います。
自分の利がどうとか、そういうのが一切なく、ただ目の前の状況がよくなるために行動する……その力がただただ凄い。言葉にすると簡単ですが、実行するには難しすぎます。それでもそれに人生を費やした……そんな人が日本にいた事、子どもたちに知ってほしいです。

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レビュアー

アフガニスタンに用水路をひいた医師、中村哲さんについてやさしい言葉で語った伝記物語。アフガニスタンについて、中村哲さんについて、何の予備知識もなくても読める本。医師であることと、命を守る為に灌漑用水を確保することが地続きであることがよくわかる。

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中学校の部

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スクラッチ

コロナ禍で黒く塗りつぶされた夏。その中でもがきながら自分たちらしい生き方を掴み取る中学生たちの“爪痕”を描く物語。

 


【みどころ】
コロナ禍で何もかもが中止、延期、規模縮小。今までの日常が奪われ、閉塞感の中で過ごした日々。中学生の4人が、もがきながら未来の自分へと手を伸ばす姿、揺れ動く繊細な心の変化に寄り添ってみてください。

歌代朔 作
あかね書房
1,650円

【選定理由】
コロナ禍初期の制限された学校生活の日常が描かれ、切実感がある。閉塞(へいそく)した状況で、登場人物の成長する様子が読者の共感を呼び、周囲の人物の描き方も丹念。奥深い感想文を期待できる。
図書館関係者

楽しいお話です。コロナ禍によって様々なことが制限され、鬱屈を抱えた中学生の少年少女が、それに反発心を持ちつつ適応しながら成長していくストーリーです。
今になって思い返せば、あの頃は、大人ですら余裕がなく、子どもたちに制限を押し付けてしまったんじゃないかと思います。でも本当に仕方なかったことです。ただ、子どもたちのなかには「仕方ない」けど「仕方ないですませたくない」ことは確かにあったはずだとこの本を読んで思いました。
コロナ禍が収まりつつある今だからこそ読んでほしい本です。そして「仕方ないですませたくなかった」と今一度、誰かに気持ちを思いっきり吐き出し、整理をつけることができれば……と願わずにはいられません。(が、それも大人のわがままなのかもしれませんね。)

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図書館関係者

課題図書ということでリクエスト。
「成績トップ冷静画伯」の千暁と「コートの猛獣、向かうところ敵なしのエースアタッカー」の鈴音を中心に描かれる、コロナ禍の中学生たちの姿。
やりたいことは何もできず、みんながやってる正解から外れないように、みんなが我慢する。
そんな環境に多感な中学生たちが影響されないわけがない。とある事件をきっかけに起きた出来事には泣かされてしまった。
タイトルが様々なことを考えさせてくれる。読み終えた後きっと、「さぁ、これから目一杯生きるぞー!」って思える。
コロナ禍の話題はもう食傷ぎみ、、と思っていたのに見事にその考えを覆された。してやられた。
10代の人はもちろん、そんな若者たちをそばで見守ってきた全ての人に推したい。

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図書館関係者

ずっと読みたかった作品です。
コロナ禍の辛さだけではなく色々な悩みを抱えながらも前に進んでいく。それも主人公だけではなく登場人物みんなが。
「何気なく過ごしているだけでも頑張っている。」この言葉に非常に共感した。
顧問の先生方もそれぞれいい味出していたし、主人公二人の無意識な誉め合いも良かった。
勢いのある文章で最後まで楽しく読めました。

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アップステージ:シャイなわたしが舞台に立つまで

目立つことが大きらいなシーラが、学校ミュージカルの舞台に?! 幕が上がるまでの日々を描く、ユーモアいっぱいの物語。

 


【みどころ】
中学生たちが学校ミュージカルを一からつくりあげていく様子を描いた楽しい物語。恋あり、悩みあり、失敗あり、思わず吹き出してしまう場面も! 作中の「ザ・ミュージック・マン」は現在も上演されている作品です。

ダイアナ・ハーモン・アシャー 作
武富博子 訳
評論社
1,760円

【選定理由】
読書の喜びを与えてくれる物語。持ち前の音楽的能力を生かし、妬みや妨害に立ち向かいながら主人公が成長していく様子が描かれ、読者の前向きな共感が期待できる。
図書館関係者

課題図書ということでリクエスト。
ダイアナ・ハーモン・アシャー作品は「サイドトラック」という作品で以前も課題図書に選出されている。
ハルブルック中学校は日本の中学校とはだいぶ違う。
髪色も自由だし、先生の発言に対して生徒がヒューヒューと歓声を上げる。そして学校ミュージカルがある。
日本の中学生たちは羨ましくなってしまうに違いない。
でも主人公のシーラは日本人とよく似てる。
周りの目を気にして、自分のやりたいことを引っ込めてしまうそんなシーラが、
学校ミュージカルの役でおじさん役に選ばれる。
読み手は自分の経験と照らし合わせながら読めるだろう。
うん、さすが課題図書。

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人がつくった川・荒川:水害からいのちを守り、暮らしを豊かにする

江戸をつくったのは家康じゃなく荒川だった? 地球温暖化で川が大ピンチ!?  面白くてスイスイ読める、川と人をめぐるノンフィクション。

 


【みどころ】
首都圏を貫く荒川は、たび重なる洪水に見舞われた「荒ぶる川」。これまで人の手で何度もつくり変えられてきました。同じような人工の川は日本各地にあります。温暖化による大水害も懸念される今、私たちは川とどう付き合うべきか。

長谷川敦 著
旬報社
1,760円

【選定理由】
荒川の変化や、人の暮らしに深くかかわる様子が歴史的、地勢的に書かれている。大きな河川が人の暮らしを守り、その営みの素晴らしさに気づかせたり、環境問題へ思いをめぐらせたりできる。
図書館関係者

今夏の青少年読書感想文全国コンクール・中学生の部の課題図書。
関東を流れる荒川は、遠方の地方に住む中学生たちにとってはあまり馴染みのない川であろう。けれどこの本は、荒川の存在と歴史や役割が、時代の変遷とともにどうなっていったのか、そして現状から未来に向けて、何が大切で、我々はどうしていったら良いのか、実に興味深く分かりやすく構成し書かれている。
見返しの地図、巻頭の写真、読みやすいフォントや、お話を聞くように読める丁寧な内容も秀逸で、全ページに渡り描かれた、その内容に即した下部のイラストの変化も楽しく面白い。
どこに住んでいても、自分の身近に存在する川について、この荒川を例に今一度考え、調べたり思いを馳せたりしながら、未来のために今必要なことや、自分に出来ることは何か、SDGsの観点や、水害から身を守る行動についても、自分ごととして意識するきっかけとなると思う。感想文ではその辺りの自分の実践や考察を書くのも良さそう。大人である自分も大変勉強になった。

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レビュアー

荒川(荒川放水路)が何故作られたのか?どのように作られたのか?という歴史的なことだけでなく、河川敷は何故あんなにも広いのか?洪水は雨が降っている間だけでなく、止んでから起きることがある、などの話が面白いのです。
『わたしがこの世を去る時には、生まれた時よりもよりよくして残したい』
という言葉を残したのは、岩淵水門の設計をした青山士(あおやまつかさ)です。彼はパナマ運河の工事に携わり、その時の経験を荒川の工事でも生かしたのです。彼が設計した岩淵水門は関東大震災でもビクともしなかったのです。
工事中に、「そこまでやる必要があるのか」と上司に言われても、自分の考えを押し通した彼のような立派な技術者がいたからこそ、荒川は今も役目を果たし続けているのです。
ここ数年、日本のあちらこちらで浸水のニュースを見ることが多くなりました。そういう場所が一か所でもなくなるように、荒川の話をみなさんに知って欲しいと思います。

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図書館関係者

課題図書ということでリクエスト。
荒川の姿は、人間の暮らしと共に変化してきたことがよくわかる。治水、利水に尽力した人、川の変化で被害を被った場所など荒川の歴史を知ることができた。
地域防災のこと、河川ごみのことなどにも触れられていて、川との付き合い方を考えさせてくれる点もいい。

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高等学校の部

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ラブカは静かに弓を持つ

孤独な青年・橘は、上司からの命令で音楽教室に潜入調査へ。チェロ講師・浅葉の生徒となるが、やがて彼の演奏に魅了され……。

 


【みどころ】
少年時代に心に傷を負い、深海魚の一種・ラブカのようにひっそり生きてきた青年が、上司から音楽教室への潜入調査を命じられる。身分を偽り通い始めた教室で師や仲間と出会い、チェロを奏でる歓びに目覚めるが――。

安壇美緒 著
集英社
1,760円

【選定理由】
主人公の目や耳を通して、音楽の本質に読者に触れてほしい。また音楽を通して変化していく、主人公の苦悩や想(おも)いを読者に感じ取ってほしい。
書店関係者

心に高い壁のある主人公がだんだん音楽仲間たちと打ち解けていく様子に心が温かくなりました。
後半はつらくて読み進めるのがしんどかったです。
好きなことに熱中することの大切さや恋愛とも友情とも少し違う大切な人との出会いがたまらなく好きで、最近読んだ本の中で1番良かったです。
本屋大賞は私は1位を押しました。今年は課題図書にも選ばれているので当店でも大々的に展開したいと思っています。

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書店関係者

タイトルからは想像つかない物語。そしてチェロという親近感のない楽器と著作権が絡むミステリにあまりそそられなかったが、本屋大賞2位は侮れず。過去の傷に捉われしんどい日々を過ごす橘は上司から潜入スパイを命じられる。仕事と思いながらチェロ講師との間にできる信頼と絆に、自分の裏切り行為が耐え切れなくなる。音楽がここまで人を変え、救い、人生を彩るのかと驚くと共に羨ましくなる。そして言葉や文章で音楽の素晴らしさを表現できること、それを味わい楽しめることが嬉しい。

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図書館関係者

「第69回青少年読書感想文全国コンクール 課題図書 高等学校の部 」ですが、
社会人にもぜひ読んでもらいたいです。
任務でチェロを習い始めたものの、講師との関係、その仲間たちとの関係は決して命じられたからの関係ではなく、主人公自身が築いていったもの。
そこから生まれる信頼関係は本物であれば何があっても変わらず続くことを教えてもらえます。
社会人にこそ、その後の生き方を学べる一冊になるのでは?
頭の中にメロディが流れてくるような音楽描写。こころを柔らかくしてくれる癒しの音楽をスパイ物に仕立てる想像力に乾杯!!

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タガヤセ!日本 :「農水省の白石さん」が農業の魅力教えます

農業ってこんなに面白い! 最新の農業から、実はスゴい日本の農作物のこと、さらには日本の農業の未来までを語る1冊。

 


【みどころ】
農業ってこんなに面白い! 若き官僚YouTuberとして多くのメディアにも登場する著者が、最新の農業から、実はスゴい日本の農作物のこと、さらには日本の農業の未来までを語る1冊。

白石優生 著
河出書房新社
1,562円

【選定理由】
農業を新しい視点で見つめなおし、その技術力や生産力が進化していることを知ってもらいたい。食料自給率ばかりが問題とされがちな昨今、新しい視点で農業を考えてもらいたい。
図書館関係者

冒頭から10代の心を鷲掴みにしそうな「国家公務員YouTuber」というパワーワードが目に飛び込んでくる。
農林水産省の白石さんが、今時の農業とその魅力をわかりやすく解説してくれている。
日本のイマドキの農業、環境のこと、農林水産省のこと、そこに関わる消費者としての自分などたくさんのことを考えながら読むことができる。課題図書に選ばれるのも納得。

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昆虫の惑星:虫たちは今日も地球を回す

ヒトは、多くを昆虫に依存している――。北欧の女性昆虫学者が、奇妙で美しく風変わりな虫たちの世界へ誘うノンフィクション。

 


【みどころ】
虫が苦手という人は多いが、虫の世話になっていない人は地球に1人もいない。あなたの知らないところで黙々と仕事をしている昆虫たち――。ノルウェーの女性昆虫学者が、奇妙で美しく風変わりな虫たちの世界へと誘う。

アンヌ・スヴェルトルップ=ティーゲソン 著
小林玲子 訳
辰巳出版
1,980円

【選定理由】
女性科学者による本書は、理系女子の励みにと期待を込めて選定。地球環境の激変が心配される中、昆虫保護の視点からも高校生がさまざまな考えをめぐらすことができる。
書店関係者

昆虫。この惑星上に恐竜よりも以前から存在し、その誕生と滅亡を見ていた。4億年前に翅を手に入れ、1億5千万年以上もの時間地球の空を支配し、地質時代に5回もあった大量絶滅を生き延びて今も存在している。
その数、ヒトひとりにつき2億匹以上。奇妙で美しく、風変わりで驚異的。
きっと地球上からヒトが滅ぶよりも、昆虫が一種でも滅びた方がダメージが大きいに違いない。
昆虫は苦手という人は多いし、私ももちろん苦手だけど、それでも知れば知るほど面白く興味深い世界であることがよくわかる。
調子に乗って「これってどんな昆虫かしら?」ってネットとかで検索するのは、おすすめしませんけれど。

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図書館関係者

表紙の美しさと課題図書ということでリクエスト。
中身は活字情報たっぷり!昆虫と人間、植物、昆虫同士、様々な観点で昆虫を知ることができる。
活字だけだからこそ、登場するたくさんの昆虫を図鑑で調べたくなる点がいい。
知る行為が次に続いていく。
タイで発見されたというセナガアナバチ「アンプレックスディメンター」。
この名前の由来を伝えたら、10代の人は喜ぶかも。
自分が気になるところだけ読むのもアリな一冊。

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