第63回小学校高学年の部 最優秀作品

「ぼくのリアル」
 岩手県 北上市立笠松小学校 6年 菊池 芯太朗

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

 この本を読み始めた時、『ぼくたちのリアル』という題名は、人気者の登場人物「秋山璃在」のことを指しているのだと思った。リアルは学年一の人気者、ナンバーワンでオンリーワン。「ぼくたちのリアル」と呼ばれるのにふさわしい人物だと思ったからだ。でも途中からリアルだけを特別な存在にするための話ではないということが分かってきて、読み終えた時には、この題名にはもう一つの大事な意味があるのだと確信した。

 この物語は、幼なじみの小学五年生秋山璃在と飛鳥井渡のもとへ川上サジという転校生がやってくることから始まる。それまで微妙な距離があったリアルとアスカだったが、サジのおかげで、二人の距離は縮まっていく。そしていろいろな出来事を乗り越えながら三人は絆を深めていった。三人は一見全く違うタイプに見えるが、実はたくさんの共通点があるということにぼくは気がついた。たとえば、お互いに相手を思いやる気持ちがあるところ、相手を尊敬しているところ、相手のためなら何でもやるという行動力があるところだ。そして一番大事な共通点は、三人とも弱みや欠点があるということだ。ぼくは今まで弱みや欠点は良くないもの、恥ずかしいものだと思っていた。でも三人と出会って、人は弱いところやダメなところがあるからこそ、他人の気持ちが分かったり、他人に優しくなれたりするのだということを学んだ。三人もきっとそういう部分を理解し合えたからこそ、本当の友達になれたのだと思う。

 ぼくが一番心に残っている場面は、林間学校でのバクロ大会の場面だ。リアルが抱えてきた過去やサジの秘密、アスカの今の思い……三人はそれぞれ本当の自分と向き合い、それを打ち明けることができた。

 「おまえがそんなにすごいやつじゃなくたって、ぼくたちはリアルのことがちゃんと好きだよ」

 アスカが言ったこの言葉がぼくの心に強く響いた。あの時リアルはどんなにうれしかっただろう。うれしさと同時にやっと本当の自分を見てもらえたという安心感もあったのではないかと思う。それまで言えなかった気持ちを全部吐き出して、リアルは泣いた。この場面は、アスカとリアルの心が本当に通じ合えた瞬間であり、そうなれたのもサジという存在のおかげだった。

 題名のもう一つの大事な意味、それは三人がそれぞれ抱える現実、つまり「自分のリアル」と向き合うという意味なのだと思う。この本を読み終えて、ぼくも自分のリアルと向き合ってみたいと思った。陸上に一生懸命取り組んでいるけれど、記録が伸びずにくじけそうになる自分、心の中では考えているのに言いたいことをはっきり言えない自分…。いろいろなことに悩んでいる自分がいる。でも、そんな自分のリアルを受け止めて、それでも前へ進んでいくことが大事なのだと思う。

 この夏、ぼくは最高の三人に出会えた。

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

●読んだ本「ぼくたちのリアル」(講談社)
戸森しるこ・著 佐藤真紀子・絵

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

※無断での転用・転載を禁じます。